通信販売とは、商品の現物を見せない、触らせないで売るビジネスだ。商品をコトバと写真に置き換えて売るわけだから、その気になれば、粗悪品を一流品のように語ったり見せたりもできる。買う側から言うと、通信販売で商品を買うという行為は、「見えない商品を、見えない売り手のコトバだけで信用する行為」になるから、「そんなの、とんでもない話」と身ぶるいする消費者が多かった。加えて、戦前の通信販売は商品を見せないどころか代金も前払いだった。返品も認めなかった。先に代金をもらわなければ商品は届けないよ。届けたらもう返品は認めないからね。売り手が買い手を信用しないのだから、買い手が売り手を信用しないのは当り前だった。「先に商品を送ったら、代金を踏み倒されるのではないか」「先に代金を払ったら、ふところに入れてドロンされるんじゃないか」この相互不信が、戦前の通信販売を日蔭のビジネス、うさん臭いビジネスにとじこめていた。年配の人ならおぼえておいでだろうか。戦前どころか、一九六〇年代までの通信販売といえば、大衆雑誌や芸能雑誌の片隅にひっそりとたたずむこんな商品が主流だった。健康痩身剤、二重マブタをつくるテープ、豊頬器、隆鼻器、背を伸ばす機械、にきび専用クリーム、タバコをやめる薬……ちょっと恥ずかしくてお店では買いにくいよという、いわば日蔭商品。恥ずかしい、こっそり、が戦前から六〇年代までの通信販売のイメージだった。