電話回線などの通信網における情報の流れ、あるいはその情報量を「トラフィック(交通こと呼ぶように、通信の世界は道路や鉄道など交通・運輸のアナロジー(類比)で語られることが多い。そのアナロジーで言えば、この情報通信革命は、二車線の高速道路が、いきなり10階建て、30階建てになるようなものだ(しかも道路工事費にあたるコストがほとんどかからないのが通信のマジックである)。あるいは、ガソリン代が突然100分の1になることを想定してもよい。それが流通、そして経済に与えるインパクトの大きさは、容易に想像がつくだろう。そしてもう一つ、通信ネットワークは限りなく広がった。それがインターネットである。道路交通網が海を越え、地球上のあらゆる地域につながったようなものだ。そのネットワークの「面」はさらに広がり、一本一本の「線」はどんどん太くなっている。いま、データ通信のトラフィック(情報量)は急激に増えており、早ければ2001年、遅くとも2003年までのあいだに音声通信のトラフィックを大きく逆転するといわれている。トラフィックを正確に量ることは困難なのだが、「日経コミュニケーション」(99年6月7日号)などの調査によれば、アメリカでは音声通信のトラフィックが毎年数%の伸びにとどまっているのに対してデータ通信は実に3〜4ヵ月で倍増しているというのだ。そして日本においてもデータ通信は年に2〜4倍のスピードで増加すると考えられている。とすれば、2005年には、通信ネットワークの大部分はデジタルのデータが覆い尽くしていることになる。まさに「トラフィック革命」が始まっている。マルクスとトラフィックと資本主義産業の発展を考えるうえで「トラフィック」=交通という概念に最初に注目したのは、おそらくマルクスだろう。エングルスとともに執筆した『ドイツイデオロギー』において、マルクスは唯物論的歴史観の見地から資本主義成立の歴史を叙述するにあたって、重要なキーワードとして「生産諸力」とともに「交通」(ご恥・耳)を用いている。たとえば。「マニュファクチュアそして一般に生産の運動は、アメリカと東インド航路との発見とともにはじまった交通の拡大によって、すばらしい飛躍をとげた」あるいは17世紀から18世紀にかけてのヨーロッパの大工業について、「やがて競争のために、およそ自己の歴史的な役割をたもとうとした国は、(中略)まもなく保護関税のもとに大産業をとりいれざるをえなくなった。しかし大産業はこれらの保護策にもかかわらず競争を一般化し(中略)、交通手段および近代的な世界市場をつくりあげ、商業を自己に従属させ、すべての資本を産業資本に転化させ、そしてそれとともに諸資本に急速な流通(貨幣制度の完備)および集中をうみだした」(いずれも古在由重訳・岩波文庫)と述べる〔服部文男監訳『新訳ドイツイデオロギーと(新日本出版社)では「交通手段」を「交流諸手段」と訳し、「コミュニケーション(運輸、通信)の諸手段」と訳する。そして生産力と交通とを団結した個人のもとに取り戻す、すなわち共産主義の必然性へと論は導かれていく。
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