最近では同じ富裕層でも、土地や株などによる蓄財がある「ストック型」の富裕層と、給与所得や自分の事業益がある「フロー型」の富裕層に分別できる。ストック型の富裕層より、フロー型の富裕層のほうがはるかにファッショングッズに出費する金額が高い。また、親と同居あるいは二世代住宅に住んでいる中堅サラリーマンのように、本来の富裕層ではないが、ストック型とフロー型の両面を享受している人たちは可処分所得が高く、概してファッションに敏感で多く支出する。これに従って、それぞれ細分化された消費者のために、あらゆる要件を網羅したマトリックスをつくって商品開発をおこなうと、商品企画担当者の頭がおかしくなってしまう。しかしブランド品が好きで、流行をつねにウオッチしている消費者の数は、間違いなく日本が先進国でダントツトップだ。彼ら彼女らの財布から最終的に金を出してもらうには、製品の品質と値段が釣り合っており、信頼できるブランドのタグがついていて、さらに売り場の環境が整っていなければならない。だからブランドビジネスにおいて、商品の品質は最重要ファクターなのである。たとえば、美味しい羊羹をつくり続ければ「とらや」というブランドになるし、手を抜かない鞄をつくり続ければ「エルメス」や「ロエベ」というブランドになるのと同じだ。だから最近のコンシューマーマーケティングでは、具体的に誰に売りたいか、をほとんど考えず、イメージ上のポジショニングだけを重視する。
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そのポジショニングによって商品内容や、店舗を開くべき場所、内装のアイデアが決まってくる。商品のポジションをよく表す「ポジションマップ」では、たとえば横軸に、左端がコンサバで右にいくに従ってトレンディーになる。一方、縦軸には、上方にいくに従って年齢層が高く、下方が若い。あるいはリーズナブルからラグジュアリーヘの軸もあるし、もっと細分化する方法もある。いずれにしてもあるブランドの位置を表すのに、必ずそこには競合する他のブランド名が記されているものだ。たとえばエルメスのように上質であり、グッチのようにファッショナブルで、コーチのようにポピュラーで、コムデギャルソンのようにデザインに個性があり、ギャップのようにリーズナブル……といったように。つまりは無意識のうちに仮想敵をつくって、その仮想敵と自分がどのくらい違うのか、どのくらい離れているのか、あるいは近いのかを知ることによって、自分の存在を知るわけだ。